8/2「遊戯葡萄」、「三文娯」、「Funtoy Games」主催による2次元ゲームの最先端を行く各社の高官を招いたセッションが上海にて行われた。
登壇者はbilibiliゲーム事業部副総経理「于楊」氏、Funtoy Games CEOの「周永峰」氏(代表作「食之契約」)、xiimoon CEOの「馮荆荆」氏(代表作「執剣之刻」)、盛大ゲームズ商務発行中心総経理「張瑾」氏(代表作「神無月」)、上海Yostar網絡CEO「姚蒙」氏(代表作「アズールレーン」)という錚々たる面々が一同に介し2次元ゲーム市場の最近の動向、開発、運営に対する考えや今後のビジネスチャンスなどに関しパネルディスカッションを行った。
以下に「遊戯葡萄」がまとめた当パネルディスカッションの後編を紹介したい。
前編はこら:https://chinagamenews.net/china-joy2018-4/
中編はこちら:https://chinagamenews.net/china-joy2018-5/
司会:三文娯は今年に2次元投資レポートを発表しました。レポートでは2017年に100件以上の投資案件があったとのことですが、ゲーム関連はその極一部にすぎませんでした。外部資本のCPに対する必要性に関してどのように思いますか?
Funtoy:これは2次元だけではなく、全てのゲームに対しても同じだと思います。
私達の融資経験からすると、外部資本は私達がよりクオリティの高いゲームを作ることに対して助けとなります。
ただ、その分プレッシャーも大きくなります。大きく2つあると思っていて、一つは前に進むためにプッシュされるようになり、ゲーム作りの初心を忘れ、資金回収のためにゲームを作るようになってしまいがちだと言う点です。
もう一つは資本を受け入れると人員の拡張ができるようになりますが、人が増えたからと言って良いゲームが作れるとは限らないという点です。
xiimoon:全体的に見て、ゲームに対する投資熱というのは大幅に下がっていると思います。
投資家たちは更にアーリーステージにある業界を追いかけていますし、その方が回収率は良くなります。
現在のスマホゲーム業界は12年に生まれてから15年の爆発的成長を経て、再び16年に2次元元年と呼ばれる波があり、ここまで成長してきました。
これは相当に成熟している市場で、参入障壁はとても高くなっていると思います。
2次元にフォーカスすると「崩壊2nd」から「崩壊3rd」に至る開発コストは数十倍にも膨らみました。外部資本はゲーム会社に対してとても必要な存在に変わりました。
13年頃は200~300万元(3000~4500万円)で良いクオリティのゲームを出すことができましたが、今では普通に作っても最低2000~3000万元(3億~4.5億円)は必要です。
融資の観点からみると、純粋な資本構成であればあるほど開発チームへの制限は小さくなります。
長期的に見るとこの方がメリットは大きいと思います。
ただ、同時に外部資本の受け入れは資金面以外でも更に多くのリソースを得ることができます。
現在の投資熱の低下はお金が無いのではなく、お金が手堅いプロジェクトに集中しているだけです。
司会:盛大ゲームズの張副総裁にお伺いします。パブリッシャーから見て投資熱の加熱とその減退を経て、外部資本の2次元CPに対する態度に変化はありましたか?
張:この問題はこの半年弊社内で何回も話し合いました。盛大ゲームズはこの数年数多くのCPに投資を行いました。
以前私達が重要視していたのは対象となるCPに成功タイトルがあるか、成功タイトルがあるとすると、それを経て完成度の高いチームになっているか(数値、デザイン、ゲームシステム設計)、でした。
2次元業界の発展と共に私達の考えも変わる可能性があります。
優秀な2次元CPはゲームコンテンツを生み出すチームという枠からはみ出し、新しいIPブランドを生み出すことのできるチームなのだと思います。
私達は「恋与制作人」などのタイトルが、運営を通じIPとしての価値を高めていき、その価値がゲーム単体の価値を遥かに凌ぐようになていくのを目にしたと思います。
これらの開発チームへのファンの価値や影響力もゲーム単体のそれではありません。
なので私達も投資を行う際は、長期的にコンテンツを産み出していく能力があるか、一つのタイトルをブランド力を持つようになるまで育てていけるようにする能力があるか、を重視するようにしています。
司会:「遊戯葡萄」でも2次元ゲームが盛り上がるにつれ、少なくないゲーム会社がグラフィクリソースを奪い合い、デザイン面での開発費用が高騰しているという状況を聞いています。CPとしてどうやってグラフィック制作のコストを抑えていますか?
Funtoy:まず、ゲームを作るには複数の長期的に安定したグラフィック制作のパートナー企業が必要です。
Funtoyは創業して4年になりますが、長期パートナー企業を有しています。
そして、開発チームがそれらパートナー企業を育てていくという観点も必要だと思います。
例えば、パートナー企業に対する検収能力であったり、自身のクリエイティブ力であったりです。
xiimoon:私は単純にグラフィック制作コストが上がったのではなく、全体的なクオリティの向上が開発コストを引き上げているのだと思います。
例えばビジュアルデザインはとても大事ですし、ストーリーも同じく大事です、音楽やボイスもそうです。
全てのゲームを構成する要素には少なくないコストが必要で、その中でグラフィック制作のコストが一番高いとも言い切れないと思います。
私達が新規プロジェクトを立ち上げる時は単一プロジェクトだけでコストをコントロールしようとは考えていません。
まず最初に見ているのは私達がどのようなゲームを開発することができるのか?という点です。
そして自分達が作れるゲームを作るにはどれくらいのコストが必要で、どのようなゲーム体験をユーザーに届けることができるのか?を見ています。
例えば私達が開発した「執剣之刻」の時は「崩壊3rd」と比較する、というようなことはしませんでした。
私達のチームはあの手のゲームを作ることに向いていないからです。
ただ、手軽な操作性の2Dゲームであれば、アニメ級のアニメーションであったり、大量のボイスと著名な音楽制作チームによる楽曲であったり、ユーザーに喜んで貰えるタイトルが作れると思っています。
このようにプロジェクトの位置づけを明確にした後で、プロジェクトの規模や予算、コストの分配、そして如何にグラフィック制作の費用対効果を高めていくかなどを検討します。
グラフィックチームの熟練度や専門性が高ければ高いほど、無駄は少なくなりますし費用対効果も高いです。
アニメーション制作やテクニカルデザイナーなどの人材は中国国内でリクルーティングしますし、立ち絵などは日本の会社さんとタッグを組み開発にあたります。
そういった努力を経てリテイクを減らし費用対効果を高めています。
司会:最後に皆さんにお伺いします。今の2次元ゲームにとって最大の挑戦とは何でしょうか?セールスランキングでTop10に入るタイトルは出てくるでしょうか?どのような方向に大ヒットタイトルがでると思いますか?
Yostar:最大の挑戦はやはりゲーム本来の質を高めることだと思います。
このジャンルへの参入者は増えてきていますし、ゲームの質を高めようと常に努力をしています。
ゲームコンテンツの量も増えてきていますし、専門性が高くなったユーザーを満足させられるようになってきています。
以前のようなガワ変えといった手法ではもはや大ヒット作は生まれないと思います。
私は2次元ゲームを作るということは一種の疑似体験なんだと思っています。
例えば「艦隊これくしょん」ではユーザーは海軍提督となり、この立場の人が何をしなければならないか、出航の際にはどのような挑戦が待ち受けているのか、などの疑似体験があります。
そしてそれら疑似体験を想定してゲームをデザインすることでモチーフ自体の設定にも合致しますし、ユーザーの没入感を高めることにも繋がります。
2次元タイトルを開発する時に、適当にモチーフを探して、成熟したゲームシステムに載せる。という手法はもはや通用しません。
必ずユーザーが没頭できるモチーフを用意しなければならないと思います。
例えば周社長(Funtoy)の「食之契約」のように食べ物の擬人化モチーフに経営シュミレーションを組み合わせたような、ユーザーにとって自然に受け入れられるような擬人化モチーフとゲームシステムの融合がとても大事だと思います。
今後Top10入りするような大ヒット作が出てくるか?との問いですが、これは今の段階では重要ではないと思います。
我々がもっと重要視しないといけないのは、どうやってより良いゲームを作るか?という点だと思います。良いゲームができれば、売上は自ずとついてくると思います。
また、大ヒット作がどの方向からでてくるか?に対してですが、これは非常に判断が難しいです。というのも、これまでの2次元タイトルの大ヒットへ道のりは全て奇跡のようなもので、再現できるようなものではないからです。
盛大:確かにTop10入りするかどうかは重要ではありません。
これまで業界ではプロジェクト立ち上げから開発、運営のフェーズに至るまで売上ベースでタイトルを評価することが多くありました。
このような考え方のもとでは初月の売上は確かに高いかもしれませんが、翌月には落ち込んでいる、ということがよくありました。
2次元タイトルの特徴は長期運営にあります。なので私は短期的な売上よりも、3年くらい平均して毎月1500万元(2.25億円)くらい売り上げるタイトルの方が良いと思っています。
その理由ですが、タイトルのライフサイクルを長く伸ばした時、その運営の過程というのはすなわちタイトルのIP化への過程だと思っているからです。
IP化の過程として見た時に重要なのはその時時の売上ではなくファンコミュニティの形成です。
このタイトルに集まってきたユーザーこそが最も価値が高いと考えていらからです。
例えば「夢100」というタイトルのユーザーは私にとても大きな衝撃を与えました。
各キャラクターの誕生日になると、ユーザーがゲームのキャラクターと運営チームにケーキや花を贈ってお祝いをするのです。
このようなファンコミュニティというのは、まだ多くのタイトルで到達できていないと思います。
市場での挑戦に関してですが、私はこの市場にはまだまだ多くの挑戦があると思っています。
今年数多くのガワ変え2次元タイトルを目にしました。
多くのCPは私達に「このグラフィックはどうですか?クオリティ高くないですか?」と提案してくれました。
私は「グラフィックは確かに綺麗ですね。でもゲームに設定と呼べるようなものはないし、コンテンツもスカスカ、ゲームプレイも設定も整合性がない。」と答えることが多くありました。
私も以前プロジェクトの立ち上げ時に目にした光景ですが、それは「何かしらのモチーフを娘化して、そこにSLG城攻め系のゲームプレイを載せよう」というものでした。
2次元ユーザーというのは対戦要素の強いものや重課金を煽って勝利を得るようなゲーム設計を好みません。
なので娘化+SLG城攻めというのは整合性がとれていないな、とその時思いました。
なので、これから2次元市場に参入する会社としては、ゲームのクオリティはもちろんのこと、ゲームの中身の整合性がとれているか、も非常に大事だと考えています。
xiimoon:長い間マーケから運営、開発に携わってきた人間として、これまでの経験則から思うことは、スマッシュヒットは作り出せるが、大ヒットは計算して作り出せるものではないということです。
大ヒット作になるかどうかは、タイトル自体のできであったり、市場の成長段階や同時期にリリースされるタイトルの競合度合いなどの外部要因に大きく左右されるからです。
挑戦は何か?というご質問でしたので、それについて重点的にお答えしたいと思います。
まず重要なのが2次元タイトルを作るということは文化作品を作っているという意識を持つべきだ、ということです。
2次元の核心はキャラクターの造詣であり、キャラクターの造詣はレベルの低いもので視覚的な部分、レベルを上げて言うと価値観の伝達と言えます。
価値観の伝達というレベルの2次元タイトルを作るということは、それはもう文化産業の領域に足を踏み入れているということだと思います。
なのでゲームの開発者でもコンテンツの原作者でも良いですが、社会に有益な価値観の伝達を行っているという点を担保しなければならないと思います。
社会に損失を与えるようなものであれば、産業にとってもダメージになります。この認識を広めるということは私にとってとても重要な挑戦です。
次に純粋なCPとしての挑戦についてお答えします。
3年持つタイトルを作るとなると、短期的な大ヒット作を作るよりも難易度が高いです。
なぜなら開発チームは長期的にゲームをデザインしゲームコンテンツを拡張させていく能力が必要になるからです。
多くのタイトルはリリース直後は調子が良いですが、すぐに人気が落ちてしまいます。
最大の原因は開発がユーザーの消費速度に追いつかないことです。
もしくは、ゲームの経済システムが長期運用に耐えられる設計になっていないかのどちらかです。
やはり、成熟したCPというのは数少ないというのが現状です。
その他の挑戦としては、市場が2次元に対して過度の熱量を持っていることです。
これはパブリッシャーの過度の2次元への投資を招き、大量の低品質の2次元タイトルが市場に出回ることでユーザー体験を悪化させてしまい、ひいてはユーザーの2次元に対する信頼も失うことにもなりかねません。
これも最近2次元業界が直面している問題です。
Funtoy:私は技術やプロダクト畑出身の人間です。
ゲームも10年近く開発しています。Top10入りするかどうか?に関してですが、Top10入りしたことがないので、どうやってTop10入りさせるか?というのは分からない、というのが正直なところです。
ただ2次元タイトルは今まさにメインストリームへと成長を遂げていて、業界全体、そしてユーザーにも影響を及ぼしています。
これはゲームユーザーが自分の好きなゲームを自分で選び始めているとも考えられます。
2次元タイトルのスマッシュヒットが続いたことや、インディーゲームの盛り上がりを受け、ユーザーはこれまでのように盲目的に伝統的なジャンルのゲームを遊ばないかもしれません。
それよりも自分でインディーゲームや2次元ゲームを探して遊ぶ傾向が出てきています。
なのでCPとして、大事にするべきはゲームのクオリティであり、「なぜゲームを作るのか?誰のためにゲームを作るのか?ユーザーはどのような体験を求めているのか?」という初心を忘れないことなのだと思います。
2次元ゲームはおそらく全てのユーザーに刺さるものではないと思います。
ただ一部のユーザーに刺さり支持を得られるのであれば、そのユーザーのためにゲームを作っていく、ということは大ヒットになるかどうか?やTop10に入るかどうか?を考えるよりも意義があるのではないかと思います。
bilibili:パブリッシャーとして回答致します。私の方からはリスクと挑戦に対しお話したいと思います。私は3つの挑戦があると思います。
1つ目の挑戦はコンテンツ力です。過去1,2年間2次元ゲームのバランスや技術的な問題は大きく改善されました。
現在の多くの2次元タイトルを見ていると各ゲームのバランスは良くなっていますし、中小の開発チームが作るゲームも技術的な向上が見られます。
こうなってくると最大の挑戦はコンテンツの企画力です。
ストーリーやキャラクター設計は中国は依然として低水準のままです。
私達がよく目にする2次元の擬人化タイトルの中でも、眼を見張るようなクオリティのものは極僅かだと思います。
なのでコンテンツ力というのが1つ目の挑戦だと思いますし、ここにはまだまだ改善の余地があると思っています。
次に2つ目の挑戦はIPを育てるという観点からタイトルをリリースできるか。という点です。
日本のIP化への意識や、中国で比較的成功した2次元寄りのタイトル「陰陽師」や「崩壊3rd」などを例に上げても良いでしょう。
彼らは自身のゲームを良くして長期的に運用できるIPとしてその周辺のコンテンツも育てています。
そうして広がっていったIPとその周辺グッズは、IPの人気が高まるにつれて輪をかけて活性化していきますし、ユーザーの忠誠度も高くなります。
なのでパブリッシャーとしてゲームを開発し運営する過程において、ゲーム運営をIPを育てるという思考と方法で運営できるか?というのが大きな挑戦だと思います。
3つ目の挑戦は、長期運営です。2次元タイトルは深掘りできる要素が沢山あります。
立ち絵であったりモチーフであったり、これらをフックとして短期間の内にユーザーを大量に獲得することも可能です。
ただし、長期的に安定して運営を行うとなると、そこに必要なのは強固な技術と、大型バージョン毎の新奇性の創出、ストーリー内容の広がりなどが、ユーザーが長期に渡ってゲームを遊んでくれるかどうかの決め手となります。
2次元タイトルとして大ヒット作がでるか?という問題ですが、私は2つの壁を突破する必要があると思います。
一つは「IPの壁」。もう一つは「次元の壁」です。
IPの壁に関しては、16年の大ヒット作である「陰陽師」を例に上げると、「陰陽師」はもともと中国ではごく一部の人だけが知る、日本風の神秘的なニッチIPでした。
ただし、このタイトルの大ヒットを受けて中国では知らない人はいないくらい認知されるようになり、このモチーフはマスにも受け入れられるIPになりました。似たようなケースとして「FGO」も挙げられると思います。
今FGOを遊んでいるユーザーの中には少なくない数の非FGOファンもいますよね。こういう現象を「IPの壁」を突破したと言えると思いますし、大ヒットには必要なことだと思います。
「次元の壁」を突破した例も少なくないと思います。
例えば17年の「恋与制作人」です。皆さん最初このタイトルは漫画風の女性ゲーマー向けのゲームだと思いましたよね?今ではどうでしょう?一般の女性ユーザーも数多く遊んでいます。
この2つの壁を突破するには、キャラクター設定やストーリー設定のクオリティと分かり易いゲームプレイが必要になってきます。
キャラ設定とストーリーで「壁」の外側にいる人を呼び込、分かりやすいゲームプレイで「壁」の外の人にゲームに触れさせることで、このタイトルが大ヒットタイトルへの変貌できる下地が整うと言えるでしょう。
これまで様々なヒットタイトルがありましたが、大ヒットタイトルとまでいかなかったのは、これらの「壁」を突破できず、所謂ゲームユーザーの範囲でのヒットにとどまったからだと思います。
私達は2次元領域の未来を楽観的に捉えています。
今年から来年にかけて大ヒット作も出てくるでしょう。
2次元市場は依然として供給が需要に追いついていない状態です。
昨年と比べてタイトル数が増えているとは言え、クオリティの高い2次元タイトルはまだまだ足りていません。
ユーザーの要求も高くなってきていますが、これは開発にとって非常に良いチャンスだと思います。
このようなユーザーの厳しい目線があってこそ、地に足をつけて開発に取り組み、ゲームの各ディティールも手を抜かずにしっかりと作り込むようになります。
そうすることで最終的に磨きのかかったクオリティの高いゲームが作り出せると思います。
そして、クオリティの高いゲームが増えてくることで、市場競争力が高くなり、大ヒットの確率も高くなると思います。
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引用:http://youxiputao.com/articles/15612