2019年を振り返るにはまだ少し早いが、今年の中国ゲーム業界におけるビッグニュースの1つとして必ず挙げられるであろう出来事は『盛大(シャンダ)』の『盛趣遊戯』へのリブランドと中国国内での再上場だ。
そんな『盛趣遊戯』の副総裁である譚雁峰氏に中国ゲームメディア『遊戯葡萄』がインタビューを行ったので、その内容を要約して以下に紹介したい。
『盛大』改め『盛趣』 利益規模と利益率を追求
盛趣遊戯 副総裁の譚氏
葡萄(以下、問):今年はどの様なことを成し遂げましたか?
譚氏:会社的には2つ。改名と上場です。
問:今、振り返って何か特別なものを感じますか?
譚氏:大変さを感じています。この数年ゲーム企業各社はIPOの失敗が続いていました。また、将来のプレッシャーを感じてもいます。
問:以前は毎年4本のスマホゲームをリリースすると話されていました。今年はそれ以上にタイトルが多いと思いますが、市場状況に合わせた結果なのでしょうか?
譚氏:2014年までは開発チームの数が今ほど多くなかった事が挙げられます。現在では開発人員は800名から3000名規模にまで拡大しました。
盛趣遊戯は利益だけを追求するのではなく、利益率と利益規模を追求しています。今は大規模な開発を行った後の回収段階にあり、大量のタイトルを一定期間内にリリースする予定です。
(盛趣遊戯の『RWBY-瑰雪黒陽』)
問:盛趣はタイトル数も手掛けるジャンルも多岐に及んでいます。プレッシャーはありませんか?
譚氏:そうでもないです。パブリッシャー的観点からするとタイトルが多くなることで、主導権が弱くなるとは思っていません。リリースできるタイトルがあってこそのパブリッシャーですから。
問:社内リソースは開発部門とパブリッシング部門で半々くらいですか?
譚氏:開発の比重が大きいです。今の時代はマーケティング主導ではなく、コンテンツ主導だと思います。
問:2016年、2017年に盛趣が開発体制を拡大にするに当たり、開発チームを探していました。その時に遭遇した問題点などはありましたか?
譚氏:一番の問題はエキスパート人材の不足です。ただ、運良く2014年頃に創業した開発チームが方向転換や業績不振などにより、新しい可能性を模索していた時期でもあったので、良い開発チームや人を集めることができました。
(盛趣遊戯の『伝奇永恒』)
問:業界内での人材獲得は難しいですか?
譚氏:今年はまだマシですが去年は難しかったです。大手企業に優秀な人材が集まっているので各社奪い合いです。
問:月給64万~80万円(4~5万元)の優秀な人材の奪い合いは激しいですが、逆に16万~32万円(1~2万元)くらいの人材は仕事を探しています。
譚氏:業務がより細かく分業されるようになり、社内に抱える人員は、専門性が高く、優秀な人材が良いというニーズの変化が招いた結果だと思います。
問:外部チームの買収は行いますか?
譚氏:はい。外部からも迎い入れますし、内部の開発力も高める努力をしています。
問:人材獲得、チーム買収、プロジェクト立ち上げ、会社のマネジメントと言った業務の割り振りは?
譚氏:プロジェクトの立ち上げに一番多くの時間を使っています。
市場にある利益を奪うには一流企業のシェアを獲りに行く必要があります。そうすると高品質なゲームが必要になりますが、自社開発だけでは間に合いません。
なので、今年はパブリッシングタイトル探しに多くの時間を費やしました。
アイドルものは中国市場でチャンスあり
問:タイトルラインナップを拝見すると、MMO、2次元、アイドルものと言ったタイトルが並びます。この3ジャンルは戦略的な最重要ジャンルとの位置付けでしょうか?
譚氏:重点としているのはやはりMMOです。MMOは売上規模の50%を超えていますし、ユーザーのニーズも明確です。
2次元やアイドルものと言ったジャンルは開発規模と効率化が進み余力が出てきたのでチャレンジしているジャンルです。
(盛趣遊戯のMMO『慶余年』)
問:MMOを得意としていた会社が変革を迫られています。この流れをどう見ていますか?
譚氏:MMOは最も難しい領域だと思います。MMOを上手く扱えるのは経験豊富な少数の大手に限られると思います。
まず、基本のクオリティを担保することが大事で、グラフィック、プログラム、企画は一定以上の水準が必要とされます。その基礎の上に何かしらの特徴を付け加えることが重要だと考えています。
我々はIPが一番で、次いでグラフィック、プログラム、企画のどれか一つが突出していれば良い、という考えです。
グラフィック、プログラム、企画の全てを突出させようとすることはリスクが高すぎます。
なので、クリエイティビティに関しても、盛趣遊戯は全く新しい革新的なものは作りません。市場に受け入れられやすい軽度のクリエイティビティを伴うゲームを作ることが多いです。
(盛趣遊戯の『ドラゴンネスト2』)
問:盛趣のMMO『ドラゴンネスト2』の特徴は何でしょうか?
譚氏:『ドラゴンネスト2』の売りはグラフィックとゲームプレイです。とても成熟した開発チームが作っています。
問:盛趣が2次元を打ち出した当初、業界内では様子を見るような感じがありました。深堀りができる領域であることが証明された今、どの様に感じていますか?
譚氏:2次元領域はチームが題材を理解していること、開発能力があることが前提となります。また、ユーザーの獲得方法も従来とは異なります。
『アークナイツ』は初月に数百万人もの新規ユーザーを獲得しましたが、これはデジタルマーケティングを積極的に行った結果ではありません。プラットフォームや口コミでコアユーザーに浸透していった結果です。
2次元というのは幅広いもので、明確な定義をするのは難しいと思います。私達は2次元を『中国古代-2次元』『音楽-2次元』と言う様に細かく分類していて深耕しようとしています。
(盛趣遊戯が配信予定の『夢色キャスト』中国版)
問:将来、盛趣に起こる問題として不安に感じていることはありますか?
譚氏:個人的には盛趣が業界の変化についていけなくなることを懸念しています。5G後もそうだと思いますし、これからの変化はより速く、より全面的に波及していくと予測しています。なので、最悪のケースを想定して準備をしておくことが大事だと思っています。
例えば、若者は何が好きか?これは私も良く分かりません。なので絶えず勉強することが必要です。今後数年でメインターゲットはミレニアム生まれ以降の世代になります。
最も恐れているのは、変化に気づかないこと。次に怖いのは変化に気づいてもそれに適応できないことです。
問:アイドルものは中国でチャンスがあると思いますか?
譚氏:中国市場におけるアイドル経済は伸びて来ています。なので『バーチャル+リアルアイドル』の結合はとても大きなチャンスがあると思います。
盛趣は『ラブライブ!』などの経験もあるので、この領域を深堀りしようとしています。
この方向性は正しいと思いますが、どの様な方法でそれを証明するか?はまだ難しいと思います。『AKB48 チェリーベイブレーズ』の様なタイトルもありますが、これはベンチマークがなく、全くの一から作ったゲームなので、この方向の正しさを証明できるかは保証できません。
(盛趣遊戯の『AKB48 チェリーベイブレーズ』)
問:バーチャルアイドルはユーザーの重複が多い領域でもあります。
譚氏:はい。ただ中国市場は十分大きいと思います。バーチャルアイドル領域でトップクラスに入れば、バーチャルアイドルというカテゴリから飛び出してより広い層にリーチできるようになります。
また、バーチャルアイドルのカテゴリから出られなかったとしても、その価値は大きいと思います。
関連情報
遊戯葡萄インタビュー原文:http://v.youxiputao.com/articles/18919
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