2019年中国スマホゲーム市場の最初のヒット作は『Rise of Kingdoms‐万国覚醒‐』のLilith Gamesが開発・運営を行う『AFK Arena』であることは既報の通りだ。
中国ゲームメディア『遊戯葡萄』がLilith Gamesの配信責任者である張氏に行ったインタビューの要点を以下に紹介したい。
『AFK Arena』は想定外の大ヒット!
問:『AFK Arena』の大ヒットは想定内ですか?
張氏:ヒットの確信はありました。Top10入りも問題ないと思っていましたが、今の状況は想定外ですね。
問:版号を取得してからの動きはどの様な感じでしたか?
張氏:元々は2020年3月頃の配信を予定していました。ただ、版号が取得できたので、その計画を前倒しすることにしました。
2週間で全体のマーケティングプランを策定し、2か月前倒すかたちで実行プランに落とし込みました。
(中国で人気のTikToker羅志祥氏を起用)
問:予算はどれくらいですか?非常に膨大だと思うのですが。
張氏:予算は大きく2つに分けられます。一つはブランディング、一つは獲得です。ブランディング広告の予算は私の経験則に基づき予算を決めました。獲得に関しては予測値を出した後、ROIを見て適宜予算を調整する、というかたちです。
問:ブランディングと獲得の最終的な予算分配比率はどのくらいですか?
張氏:初月だとブランディング1に対し、獲得が6から8、くらいの比率です。
問:『AFK Arena』のマーケティングのポイントは?
張氏:わかりやすく言うと『ターゲットユーザーの囲い込み』です。『AFK Arena』では以下の3つをセールスポイントにしてマーケティングを行いました。
1.デザイン重視層:TapTapやbilibiliユーザー。業界関係者や若者層が多く、ゲームのデザインが好き。量は少ないがインフルエンサーとしての効果が高い。
2.『小冰冰传奇(ソウルクラッシュ)』のユーザー層:同作からの流入や復帰。同作の動画配信者とのコラボなど実施。
3.マスユーザー:カジュアルさ、を強調。
結果として、事前予約数200万を目標にしていましたが、最終的にはノンIPとして400万を突破できました。
(デザイン重視層に向けたWeiboツイート)
『AFK Arena』成功の秘訣はユーザーの囲い込み
問:広告クリエイティブ素材の出稿頻度を教えてください。
張氏:『AFK Arena』は水曜日に配信開始しました。なので、その週の日曜日までに全ての素材を投下しました。最初の4日間に集中的に出稿した、ということです。
問:広告がユーザーに接触してからゲームをインストールするまでの過程はロジカルに設計されているのでしょうか?
張氏:そこはそれほど細かくは設計していません。ただ、ロジックとしては、異なるプラットフォーム、異なるシチュエーションで広告に接する機会を用意し、そこから各ストアのフィーチャーバナーからインストールに転換させるイメージです。
(闘魚、TikTokで人気の配信キャラクタ一条小団団も起用)
問:今回『AFK Arena』で採用した『ターゲットユーザーの囲い込み』戦略ですが、再現性はありますか?
張氏:この手法にはリスクがあります。まず、タイトルのクオリティがこのリスクに耐えうるレベルにあることが必要です。そして、社長がこのリスクをとって、大規模な予算を承認することができるかどうか?も大事です。
問:中国版『Rise of Kingdoms -万国覚醒-』もこの手法を用いますか?
張氏:想定外のことが起こらなけらば、使うことになりますね。
問:現在の『AFK Arena』の海外と中国市場の売上げの比率はどれくらいですか?
張氏:海外1、中国が5、という感じです。
問:そんなにですか?
張氏:はい。なので、中国市場はやはり世界一の市場なのだと思います。あと、『AFK Arena』は日本や韓国ではまだ配信していない、というのもあります。
Lilith Games 2次元にも挑戦!
問:2019年はLilith Gamesの海外進出にとって重要な一年でした。
張氏:はい。海外展開は重要戦略の一つでした。具体的には、世界各地の重要市場におけるローカライズと運営、マーケティングをより深く行うことを重視しました。
問:韓国市場はコンテンツの消費速度がとても速いとの認識がゲーム業界にはありますが、『Rise of Kingdoms -万国覚醒-』の韓国でのヒットの要因はなんでしょうか?
張氏:韓国で意識しているのは『トレンド感』です。韓国は特に流行に敏感で、流行りものを追いかける傾向がとても強いです。
なので、ブランディング広告予算の50%以上を事前予約の段階で使い切りました。
(人気俳優のハ・ジョンウ氏を起用)
問:では、ローカライズはどのようにされているのでしょうか?
張氏:組織を3つのラインに分けています。一つ目はプロジェクトチームで、開発チームとともにプロジェクトの配信戦略を策定します。
二つ目は職能部門で、マーケティング、PR、ビジネスアライアンス、ローカライズ、カスタマーサポートなど各種専門性に特化したチームが、自身の専門分野で結果にコミットしています。
三つ目は現地チームで、広告などでは獲りきれないユーザーを伸ばすため、より細やかな対応を行うチームです。これはゲームのパフォーマンスの良い地域に特化してチームを用意しています。
問:今後の海外市場はどのようになると思いますか?
張氏:まだ、趨勢は決まっていないと思いますが、競争はより熾烈になっていますね。
問:2020年のタイトルラインナップを教えてください。
張氏:『Rise of Kingdoms -万国覚醒-』の中国版、『AFK Arena』プロデューサーの新作SLG、あと、2次元タイトルや『Rise of Kingdoms -万国覚醒-』の開発チームの新作も年内に予定しています。
問:SLGが多いですね。
張氏:SLGはモチーフなど色々深堀できますからね。
問:2次元タイトルも出すのですか?
張氏:はい。東南アジアでも凄く伸びていますし、新しいモノを創造できるジャンルだと思うので、まだまだ勉強中ではありますが、頑張っています。
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