1984年に中国国務院の認可を受け、消費者保護のため設立された『中国消費者協会』はオンラインゲーム事業者に対し広告における優良誤認や有利誤認といった不当表示、消費者の選択権の保護、消費者との取引の公平性など3つの問題点を指摘し、それに消費者重視の態度を加えた4つの要求を提示した。
同協会の要求は法的拘束力を伴うものではないが、今後中国ゲーム業界にどの様な影響をもたらすのか注目が集まっている。
中国消費者協会が指摘する3つの問題点
中国消費者協会が3月3日付けにて提示したオンラインゲーム事業者に対する問題点の要点は以下の通り。
【中国消費者協会が指摘する3つの問題点】
■不当表示広告
広告物と実際のゲーム内容が一致しない。一部のオンラインゲームではキャッチコピー、動画広告などを通じてゲームのセールスポイントを宣伝するが、キャラクタ、アイテムやその機能、エフェクトなどにおいて広告物とゲーム内容が一致しない。
■消費者との取引の公平性
一部のオンラインゲーム事業者はゲームのデモ動画に『最終効果はゲーム内の効果に準ずる』との表示を加えることで、消費者との取引の公平性を毀損し、消費者の権益を侵害している。
■消費者の選択権の保護、財産権損害
一部の消費者からオンラインゲーム事業者は消費者の同意を得ず、ゲームコンテンツの最適化、バージョンアップなどの名目の下、販売済のキャラクタやアイテム及びその機能、エフェクトなどを変更している、との意見が寄せられている。
中国消費者協会は上述の3つの問題点に『消費者重視の態度。積極的なコミュニケーション。』を加えた4つをオンラインゲーム事業者に対する改善要求として提示した。
3つの問題点の背景は?
中国消費者協会の要求提示を受けて、中国のゲームメディア『遊戯葡萄』は以下のように各問題点の背景を解説している。
【中国消費者協会の3つの問題点の背景】
■不当表示広告
中国消費者協会が指摘する虚偽広告は世に広まって久しい。広告のコンバージョンレートを良くするため、この数年『ニーア オートマタ』『ドラッグオンドラグーン』などを素材として用いた広告をよく目にした。
この手の手法を用いてユーザーを低単価で獲得していたゲーム会社は、この要求が通るとなると影響を受けることになる。
■消費者との取引の公平性
ゲームリリース前に行われるアバターアイテムなどの誇大広告と実際のゲーム内の効果との乖離がこれに該当すると思われる。ただ、ゲーム開発の過程において、一部の会社では先にプロモーションムービーを出し、ユーザーの反応を見てゲーム内容を調整している。今後この要求が厳しくなると、この開発フローに影響が出る可能性がある。
■消費者の選択権の保護、財産権損害
最も複雑な問題。ゲーム会社の利用規約により消費者の権益が不当に侵害されているとの主旨だが、発生しうる事象が多岐に渡る点、悪意を持った改編なのか、正常なアップデートなのか、など明確な線引が必要になる。
通常のゲームの調整やアップデートに際し、消費者の同意を得なければならないとなると、全ての会社がバージョンアップデートのフローや設計に影響を受けることになる。
弁護士が言う対応策は?
遊戯葡萄の問い合わせに対し、中国の弁護士事務所『诺诚律师团队』は『2019年から消費者からの訴訟案件が増えており、消費者保護の問題が紛糾した場合、裁判では一般的に消費者を守る傾向にあるため、以下の対応を行うなどゲームサービスの正当性を高める必要がある』と話した。
1. 利用規約確認フローの整備
2. プライバシーポリシーの整備
3. 利用規約の重点を太字で示す
4. 利用規約内容が法律違反をしていないか見直す
消費者保護の観点とゲーム事業者側の観点に乖離があるのは程度の差こそあれ、日本も中国も変わらないように思う。消費者保護の声が高まることは業界の長期的な発展からすると悪いことではないだろう。
今回の中国消費者協会の要求に対し、ゲーム事業者が今後どの様な対応を採るのか動向に注目したい。
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中国消費者協会『网络游戏经营者应切实保护消费者合法权益』:http://www.cca.org.cn/zxsd/detail/29477.html
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