中国ゲーム業界でリーガルコンサルティングを行う『诺诚游戏法』がゲームメディア『遊戯葡萄』に版号の貸借に関する判例に関して寄稿している。要点を以下に紹介したい。
■約220万円で版号の実質貸借契約を締結
2020年12月、中国のゲーム開発運営企業A社は、新作モバイルゲームの開発を完了したものの、『网络出版服务管理规定(オンラインゲーム出版服務管理規定)』に基づく『版号』申請を行わず、パブリッシャーであるB社とモバイルゲーム使用許諾契約を締結。11万元(約220万円)でゲーム版号を借り受ける形での運営を試みた。
契約上はB社がゲームの権利者とされていたが、実際にはA社がゲームの全コンテンツを提供しており、契約金は版号の“貸借料”として支払われたものであった。
■『貸借された版号』が複数プラットフォームで承認されず、訴訟へ
契約履行後、A社は貸借した版号では複数の配信プラットフォームでの審査が通らず、ゲームを全面的にローンチできない状況に直面。B社はこれを受けて、他の版号への切り替えや画像修正といった補完策を講じたが、複数の配信プラットフォームでリリースができないと言う問題は最終的に解決されなかった。
A社は支払済みの11万元の返還を求めて訴訟を起こしたが、一審では契約の無効が認定され、請求は棄却された。
■広州知識産権法院:『審査制度を骨抜きにする契約は無効』
A社は控訴し、『广州知识产权法院(広州知識産権法院/広東省広州市の知的財産専門裁判所)』に上訴したが、同院も以下の理由により無効とする一審判決を維持した。
- 当該ゲームのコンテンツはA社が独自に制作したものであり、B社が提供した版号とは出版内容に対応関係が存在しない。
- 両社は契約という形式を用いて、『网络出版服务管理规定(オンラインゲーム出版服務管理規定)』による事前審査制度を実質的に回避した。
- よってこの契約は無効であり、契約に基づく金銭的なやり取りは当事者間で分配してはならず、行政機関による処理が必要とされた。
この判決は、単に契約書の形式を確認するのではなく、契約の実質的な目的が制度の回避にあるかどうかを重視した判断として注目される。
■诺诚游戏法のコメント:版号の貸借・売買は“未承認配信”に等しい
リーガルコンサルティングを行う『诺诚游戏法』はこの判例に関し、次のようにコメントしている:
游戏版号批文(ゲーム版号認可書)は、国家新聞出版署が発行する行政許可文書であり、貸借や売買は原則として禁止されています。
このような契約は、形式がどうあれ実質的には未承認でオンラインゲームを運営する行為に該当し、行政当局によって処理されるべき違法事案です。
さらには以下のリスクを強調している:
- 民事契約が法律・行政法規の強行規定に違反している場合、契約は無効とされる。
紛争が生じた際でも法的救済を受けることは難しい。 - 貸借・売買によりゲームをリリースした場合、これは《网络出版服务管理规定》に違反する行為となり、行政処分(罰金、配信停止など)の対象となる可能性がある。
■まとめ:外資・内資問わず、形式より「実態」が重視される法環境
日本企業の中国展開に際して、版号の貸借が意図的に行われることは想定しずらいが、意図せず巻き込まれてしまうケースも起こりえることから、今回の判例を元に、中国市場への進出においては、契約の文言や名義の形式だけではなく、実際の運用実態が法令に即しているかが厳しく問われることを再認識できればと感じた。
本件は、形式的に整えられた契約であっても、その実態が行政規定の骨抜きであると認定されれば、契約そのものが無効となりうるという、明確な司法判断を示した事例であると言える。
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