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【インタビュー】元テンセント・ByteDance、40歳手前で独立——炎上の汚名を返上する武侠RPGが中国で話題!

インタビュー

中国ゲームメディア『游戏那点事 Gamez』が、元テンセント・ByteDanceのプロデューサー黄昆氏へのインタビューを掲載した。
同氏が率いる40人のスタートアップが開発中の水墨画スタイル武侠RPG『剣隠侠踪録(剑隐侠踪录)』は、初の内部テスト参加資格が転売市場で数百元の値をつけるほど注目を集め、TapTap予約ランキングTop10・評価スコア9.1を記録している。
なぜ大手を離れた開発者の初作品がこれほどの反響を呼んでいるのか——その開発思想を聞いた。


炎上からの再起——10年越しで作る「本当の武侠ゲーム」

黄昆氏のキャリアの原点は2012年、テンセント傘下スタジオ・北極光(北极光)への入社だ。そこで約8年間、武侠MMO『天涯明月刀OL(天涯明月刀OL)』の開発に携わり、コアプランナーとして頭角を現した。

しかしその道のりには、今も語り継がれる「黒歴史」がある。
2014年のクローズドβ時代、「どうせ数値を売り出すに決まっている」というプレイヤーの批判に対し、黄昆氏は真っ向から反論した。
ところが翌2015年の正式サービス開始後、ゲームは修練値・石母といった強化アイテムを課金販売する方針へ転換。
反論していた当人が数値課金の片棒を担いだ形になり、コミュニティの怒りを買った。
黄昆氏はそのとき、自身のWeiboアカウント名を自虐的な「日比酱(ひびちゃん)」へと変更し、批判を正面から受け止めた。

この出来事は10年経った今もゲームコミュニティで「耻辱柱(恥の柱)」——炎上した人物や過去の過ちを指すコミュニティ用語——として語り草になっている。

「耻辱柱から降りたい。コンテンツでプレイヤーを動かし、長く愛される武侠ゲームを作りたいんです」

その言葉には、単なる雪辱以上のものが滲む。
2020年にテンセントを退社した黄昆氏は、ByteDanceで中国風ゲームの開発を担当。
そして2023年から毎週土曜日、自宅に仲間を集めて設計会議を重ね始めた。
2024年、ついに独立して『剣隠侠踪録』を正式にプロジェクトを立ち上げる。

「私のキャリアでもっともスムーズに進んでいるプロジェクトです」——黄昆氏はそう言い切る。


大手とインディーの「中間」を狙う、水墨スタイルの選択

『剣隠侠踪録』の第一印象を決定づける2D手描き水墨スタイルは、美的趣味の問題ではなく、戦略的反省の産物だ。

「天刀の時代、ビジュアル至上主義でグラフィックを極めたが、コンテンツの供給スピードが犠牲になった。40人規模のチームが大手の3D大作と正面から戦うのは現実的ではない」

黄昆氏が目指したのは、子どものころに遊んだ文字MUD『北大侠客行(PKU Xia Ke Xing)』と、超高精細3D MMOのちょうど中間だ。
『北大侠客行』は1990年代から続く伝説的な中国のテキストオンラインRPGであり、画面表現ではなく「テキストの密度と自由度」でプレイヤーを引き込む文化の源流にある。
水墨スタイルはその精神を継ぎながら、視覚的な没入感も確保するための合理的な落としどころだった。

舞台は宋の神宗即位前の2年間。
王安石変法前夜という歴史的激動期を背景に、金庸(金庸)作品のように歴史と江湖(架空の武侠世界)を交差させる構成だ。
ストーリーテキストは100万字超。
全クエストの説明は語り部・杜康の一人称視点で書かれており、プレイヤーが体験済みのクエストを後から読み直すと「杜康が見た江湖」が浮かびあがる仕掛けになっている。
この文章設計は『ウィッチャー3(巫师3)』における吟遊詩人ダンディライオンの語り口から着想を得たという。


武功は売らない——200本の武学、すべてゲーム内で習得

剣隠侠踪録 武学システム
『剣隠侠踪録』TapTapページより

武学(武術の奥義・スキルに相当するゲームシステム)への哲学も、このゲームの際立つ特徴だ。

外功(刀・剣・拳・棍など物理系スキル)と内功(混元・氷・雷・火・毒の5属性)を自由に組み合わせるシステムで、内力属性が50%を超えると外功のビジュアルエフェクトが属性に応じてリアルタイムで変化する。この演出を実現するために、全武学に対して5属性バージョンのエフェクトを個別に制作した。

そして最大の特徴が、課金販売なしという設計だ。全武学はゲーム内コンテンツとして入手できる。

「崖から落ちたら秘伝書があった、という驚きの体験を再現したい。2,000元(約44,000円)課金したら秘伝書が買えた、という体験ではなく」

武侠小説の世界では、主人公が偶然洞窟に迷い込み秘伝書を発見する——そんなロマンこそが武侠の醍醐味だと黄昆氏は言う。
初回テストでは40本超の武学を解放。
正式版では200本以上を予定している。


誇りを持って稼ぐ——F2Pでも数値課金はしない

40人規模のチームが長期的にコンテンツを供給し続けるには、基本無料(F2P)モデルが現実的だ。
しかし黄昆氏は数値課金を採用しないと明言する。
課金ユーザーは育成アイテムで成長を加速できるが、最終的な能力の上限は課金の有無でほぼ変わらない設計にする方針だ。

黄昆氏が使った「站着挣(立って稼ぐ)」という言葉が印象に残る。膝を折らずに尊厳を保ちながら稼ぐ、という中国語のイディオムで、数値課金という「ひざまずく」選択をしたくないという意志の表れだ。

「無課金でも完全なシングル体験ができる」を設計目標に掲げ、長期的なIP構築を目指す。今の武侠ゲーム市場はMMOか数値ガチャが大半を占める中、NetEase(网易)の『燕雲十六声(燕云十六声)』以来の「不思議だが自己一貫したゲーム」との声がコミュニティから上がるのも、この設計の一貫性があってこそだろう。


まとめ

黄昆氏が作ろうとしているのは、ゲームであると同時に「リベンジ」だ。
数値課金の片棒を担いだという10年前の負い目を、コンテンツの力で返す——そのために大手を離れ、40人のチームで生き残ることを選んだ。
ガチャなし・ソーシャル弱め・武学200本すべて無課金という設計は、ビジネスの合理性ではなく信念から来ている。

「まずチームと作品が生き残ること」

その先にある、より良いコンテンツを作るための基盤を今つくっている——40歳手前のプロデューサーは、そう静かに語った。


※1元=約22円換算



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