テンセント傘下のLightSpeed Studios(光子工作室群)が社内向けに開発・運用するAI統合プラットフォーム「Light AI」の全貌が明らかになったと、中国ゲームメディア『游戏葡萄』が報じている。企業主導のトップダウンではなく、一人のテクニカルアーティストが2021年に始めた取り組みが、今や全スタジオで活用されるプラットフォームに成長した経緯は、AI導入に悩む開発現場にとって示唆が多い。
■要点まとめ
・LightSpeed Studiosの内製AIプラットフォーム「Light AI」は、社内のTA(テクニカルアーティスト)が2021年に個人主導で始め、現在はアート・企画・運営の全部門で活用されるまでに成長
・外部モデルの単純な集成ではなく、プロジェクトごとのアートスタイルに合わせたカスタム開発と工程化が差別化の核心。テンセントの自社大規模言語モデル「混元(Hunyuan)」との連携も進む
・KPIを設けず現場主導で育てた「使いたくなる設計」が全員自発的利用につながった。AI導入の成否はモデルの性能より普及設計にあることを示した事例
現場から生まれたLight AI
Light AIの原点は2021年、LightSpeed Studiosのテクニカルアーティスト(TA)「小凡」が浙江大学との共同AI研究でゲーム素材の高解像度化ツールを開発したことに遡る。当時はChatGPTの登場より1年以上前で、社内のAI活用はまだ模索段階だった。
2022年10月、小凡は企業WeChatのチャットbot「灵感小助手」を独自に開発。画像生成AIを利用できるこのツールは公開から2時間以内に社内で口コミが広がり、多数の社員がアクセス申請を送るほどの反響を呼んだ。導入後、アートチームの効果図制作は週1版から週5〜6版へと大幅に向上した。
2023年、分散していたAIツールを一元管理するプラットフォームとして「Light AI」を構築。現在はアートチームのほか、企画・運営など複数職種が日常的に利用している。
「ただのモデル集成」ではない工程化
Light AIの差別化点は外部モデルの単純な統合ではなく、プロジェクトごとのアートスタイルや制作規範に合わせたカスタム開発にある。代表的な機能として「関卡白模直出効果図(レベルデザインのラフから効果図を直接生成)」がある。プロジェクト固有の素材でモデルを微調整し、アート担当者がパラメータを意識せずにワンクリックで使えるよう設計されている。
また「画布(キャンバス)」機能はアート職に直感的なUI設計で、画像の一部を指定して口語で指示するだけで要素の追加・変更・削除が可能。テンセントの自社大規模言語モデル「混元(Hunyuan)」との連携も進めており、カスタマイズ精度を高めている。
3Dシーン担当のインターン社員は「3Dモデル500体のポリゴン数変更を手作業でやれば5時間以上かかるが、Light AIのスクリプトなら2つのフォルダを選んでクリックするだけで、お茶を入れる時間で終わる」と語る。
普及の鍵は「布教活動」
技術面と並んで注目されるのが普及のアプローチだ。Light AIチームはKPIを設けず、社内コミュニティ(参加者1,000人超)の運営、エレベーター前への告知ポスター掲示、春節のお年玉袋のデザイン制作コンテストといった地道な活動を継続。新機能を「遊べるもの」として発信し、冷たい業務ツールではなく社員が自発的に使いたくなる場づくりを重視した。
アート部プロジェクト管理ディレクターのelva氏は「AIは脅威ではなく、AI時代にアート職のバリューをどこに置くかを考えさせてくれるものだ」と述べ、スタジオ全体でAIを前向きに受け入れる文化が定着していると強調する。
まとめ
Light AIの事例が示すのは、AI導入の成否はモデルの性能よりも「エンジニアリング化」と「現場への定着」にあるという点だ。起点となったのは一人のTAの課題意識であり、KPIなしで全員が自発的に使うプラットフォームに育ったのも、現場ニーズに徹底的に応え続けたからに他ならない。LightSpeed Studiosは現在、このプラットフォームをスタジオ外にも開放することを次の目標に掲げている。
関連情報
- 参照元:游戏葡萄「在游戏行业,AI的风吹了老久」(2026年4月)
![中国ゲーム 日本語情報サイト[ゲーム大陸]](https://chinagamenews.net/wp-content/uploads/2025/07/Image_20250731143942-scaled.jpg)

