中国のゲーム業界で、AI技術による声優の声の無断利用をめぐる問題が表面化しつつある。大手声優プロダクション2社が相次いで法的な対抗姿勢を打ち出したことで、AI音声ツールを導入するゲーム会社が抱えるリスクが改めて注目されている。
大手2社が法的対抗を宣言
2026年3月、国内大手プロダクション奇響天外が公式声明を発表した。同社は『原神』『Honor of Kings』など、国内外で広く知られるタイトルへの声優起用実績を持つ。声明では、所属アーティストの声をAIで収集・学習・合成・使用する行為について、目的や商用・非商用を問わず人格権の侵害にあたるとして、法的措置も辞さない方針を示した。
これに先立つ3月14日には、729声工場の所属声優たちも連名で同様の声明を公表している。同社は『狐妖小紅娘』『剣網3』などの作品に携わってきた実績を持つ。
「声の権利」をめぐる法的な背景
中国民法は、氏名や肖像と並んで「声」を人格権として保護している。この規定は近年、AI技術による声の複製や合成にも適用されるとの解釈が広まっており、無断での学習データへの組み込みも侵害行為として問われうる。
今回2社が強調したのは、「商業利用かどうか」「学習目的かどうか」といった従来の線引きが通用しないという点だ。非商用・研究目的と称した利用であっても、書面による事前の許諾がなければ侵害にあたるという立場を明示した。
ゲーム会社が気づきにくいリスク構造
ゲームの多言語対応や長期運営には膨大な音声収録が伴う。AI音声はその負荷を大幅に軽減できるとして、ゲーム会社の間で導入が広がっている。
ただし、市場に出回るAI音声サービスの多くは、学習データとして使われた声のアセットがどこから来たのか、その取得経緯が明らかにされていない。サービス提供側が侵害リスクを契約上で保証するケースも稀で、問題が生じた際にゲーム会社が責任を負わされる構造になりやすい。
AI音声ツールの「便利さ」の裏側に、調達先の法的信頼性を確認しないまま使い続けることのリスクが潜んでいる。
同様の動きは海外でも
声優・俳優のAI利用をめぐる問題は、中国固有の話ではない。米国では俳優組合SAG-AFTRAが、AI技術による「デジタル上の人格複製」に対する報酬と事前許諾を労使交渉の中心に据えており、業界標準の整備を求めている。
中国でも今回の声明を契機に、声の利用許諾や収益配分に関する業界内ルールの議論が始まる可能性がある。
まとめ
中国大手声優プロダクションによる今回の動きは、AI音声の普及速度に対してルール整備が追いついていない現状を映している。ゲーム会社にとってAI音声は制作効率を高める有力な手段だが、素材の調達元や契約内容の確認を怠れば、第三者の人格権を侵害するリスクを抱えることになる。業界全体で許諾の仕組みが整備されていくかどうか、今後の動向が注目される。
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参照元:こちら
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