日本では『日替わり内室』の運営元として知られる中国ゲーム大手『37Games』の海外運営部高級総監の彭氏に、中国ゲーム企業の海外展開事例を中心に配信している『独立出海联合体』がインタビューを行った。
37Games海外事業責任者が語る台湾ユーザーの課金意欲、好きなアイテム、マーケティング手法とは?
37Gamesは2012年から海外展開を開始
独立出海联合体 問): 37Gamesの海外展開をフェーズ毎に分けると、現在はどのフェーズでしょうか? タイトル選定の基準に変化などはあったのでしょうか?
彭氏:当社の海外展開は主に3つのフェーズに分けられます。第1フェーズは2012年から2016年後半までの海外展開初期フェーズです。当時は代理パブリッシングモデルを通じて海外市場に進出し、香港、マカオ、台湾、東南アジアなどで徐々に足場を固めてきました。
第2フェーズは2016年後半から始まり、自社開発タイトル『レジェンドオブリング』を展開しました。同作は月商16億円(1億元)以上の売上を記録するなどヒットとなりました。
2018年からは第3フェーズに入り、香港・マカオ・台湾・東南アジアでの優位性を維持しつつ、日本・韓国・欧米市場を開拓し、代理パブリッシング・自社開発自社運営などタイトルの多様化を図っています。
(『レジェンドオブリング』)
問:確かにここ数年、37Gamesの海外事業は、従来の代理パブリッシングから代理パブリッシング+自社開発・自社運営モデルへと変化しているように思います。
彭氏:そうですね。
問:中国ゲーム会社の海外進出が盛んになり、どの地域でも成果を上げている中国パブリッシャーがいます。これらの会社との差別化はどの様にお考えですか?
彭氏:業績面では、香港、マカオ、台湾、東南アジアで優位性を維持できていると思います。 また、日本市場では売上の伸びが比較的早く、韓国市場でも売上を伸ばしています。
欧米市場は、当社の継続的な成長のためのターゲット市場と見ています。 これら市場はユーザーが定着するまでに時間がかかるので、適切なタイトルを選ぶことが非常に重要です。これを踏まえ、今後は欧米市場への投資を増やし、欧米市場向けにカスタマイズしたタイトルを複数リリースする予定です。
37Gamesのマーケティング施策とは?
問:37Gamesが得意とする香港、マカオ、台湾、東南アジアでは、ここ2年で中国パブリッシャーの多くが徐々に撤退をしています。 この地域でのビジネスのハードルが高くなっているということでしょうか?
彭氏:ビジネスのハードルが現地市場でのユーザー獲得単価の高騰を指すのであれば、そうなりますね。
問: では、このハードルが高くなったことで、37Gamesがこれらの地域で事業を展開するためには、何が鍵となるのでしょうか。
彭氏:冒頭でお話ししたように、弊社は海外展開を2012年から行っており、この点においては一日の長があると思っています。2019年6月に台湾・香港・マカオ向けに出した『斗羅大陸H5』を例に挙げると、リリース後1ヶ月で70万ダウンロードを獲得するなど、ユーザー獲得に強みがあると考えています。
ゲームがその地域でヒットするかどうかは、第一にゲームが面白いかどうか、第二にユーザーが効率よく獲得できるか、だと思っています。
(『斗羅大陸H5』)
問:具体的に台湾・香港・マカオ市場でどの様にユーザーを獲得しているのでしょうか?
彭氏: まず前提として、長年海外市場に進出し、多くの潜在ユーザーを蓄積・育成してきた点が挙げられます。 この点は、近年海外市場に参入してきた事業者とは違う点だと思います。
2つ目は、Google PlayとFacebookとの関係が深いので、技術的なサポートも得られている点です。
これら外部のリソースを組み合わせながら、内部ではクリエイティブチームを設立し、そのチームで各タイトルのセールスポイントを分解・分析、そこに現地市場のトレンドを取り込んで広告クリエイティブを制作することで、『統合型コンテンツマーケティング』とも言うべきマーケティングを行っています。
問:『統合型コンテンツマーケティング』とはどういうものでしょうか?
彭氏:具体的なポイントとしては、以下のようなものがあります。
1つ目は、ローカライズ精度の高さです。 単にテキストを現地の言語に翻訳するのではなく、ゲームプレイや素材など、あらゆる面でローカライズを加えました。 最終的に実現したい効果は、現地企業が作ったゲームだと思わずにプレイしてもらうことです。
2つ目は、ユーザーの好みを見つけて、ターゲットを絞ったプロモーションを行うことです。 プロモーションを行う前に、現地ユーザーの好みを見つけ、KOLやゲーム実況者を招いて動画を作成するなどして、革新的な点やゲームの違いを際立たせ、プレイヤーの認知度を高めていきます。
3つ目は、広告素材や広告アイデアを中心としたデジタルマーケティングです。『斗羅大陸H5』では大作感のあるクリエイティブを大量に作り、ユーザーにも好評でした。
4つ目は、地域に根ざした運用をしっかりと行うことです。 アイテムの価格設定、アップデートのペース、コミュニティの構築・運営など、地域ごとのユーザーの特性に応じて運営スタイルを変え、プレイヤーが本当に長くゲームを楽しめるようにしていきたいと考えています。
台湾ユーザーが好きなアイテムとは?
問:ブランディングとデジタルマーケティング(ユーザー獲得)の両面をお話しいただきましたが、ブランディングとデジタルマーケティングの比率はどの様に分配しているのでしょうか?
彭氏:この比率は実際の状況に合わせて変わっていくと思います。リリース1ヶ月前から始まる事前登録期間はブランディングが多くなります。
そして、リリース月になるとブランディングからデジタルマーケティング主体に切り替わります。ただ、我々のプロモーションは継続して行うので、バージョンアップデートなどに合わせてブランディングも継続します。
問:台湾ユーザーは課金単価が高いと言われています。運営施策などで気をつけるべき点はありますか?
彭氏:まず、台湾ユーザーの支払い能力というのは、重課金者が多いということではなく、全体的にユーザーの課金意欲が強いということです。
一般的に、台湾のユーザーは中国のユーザーに比べて衝動的ではなく、合理的な支出とその効果を気にする傾向があります。例えば、数万円を使って、その効果に納得していなければ、それ以降課金を止めてしまいます。なので、課金価値はゲームプレイに紐付いているので、新しいアイテムの販売に際してはそれに紐づくゲームプレイの検証が必要になります。
他には、台湾のユーザーは肩書きやアバター、翼などの装飾に興味があります。なので、台湾で課金イベントを行う際はこれらを中心に施策を考えています。
問:人気ゲームほどリリース後にコンテンツが枯渇して、人気があるがためにやることがなくなり、売上が伸びない、というケースがあります。台湾・香港・マカオ展開にはどの程度コンテンツをストックしておくべきでしょうか?
彭氏:この地域のユーザーはプレイタイムが長い傾向があります。また、課金意欲も強いので、コンテンツ消費速度はとても速いと思います。
なので、3ヶ月分のコンテンツはストックした上でリリースするべきだと思います。もちろん、これら3ヶ月分のストックをリリース時にすべて開放するのではなく、月一で大型アップデート、1~2週間に一度小型アップデートと分割するのが良いと思います。
問:台湾・香港・マカオ展開ではどのジャンルのゲームを優先的に選んでいますか?
彭氏:過去の経験から、MMORPGが多くなっています。 しかし、2018年以降はカード、2次元、SLGなどのジャンルも含めて試験的に展開しており、『SNKオールスターなどのゲームもリリースしています。
インタビュー原文では他にも東南アジア市場などにも言及している。興味のある方は以下関連情報のリンクからチェックしてもらいたい。
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