一挙40作超のタイトル発表を行ったテンセントゲームズ高級副総裁のSteven Ma氏(马晓轶)に中国ゲームメディア『遊戯葡萄』がインタビューを行った。
『ドラブラ』の日本でのヒット、海外展開、ゲームジャンルのイノベーションに関する考察や『イノベーションの失敗は必然、成功は偶然。』と語る同氏が見据えるゲーム業界の今後とは?
テンセントゲームズの海外展開について
問:Q4の決算資料によるとゲーム売上の23%が海外市場によるものでした。テンセントゲームズの海外展開は予想通りですか?
Ma氏:予想の範囲内です。ですが、発展速度は想像を超えていました。これはグローバル展開における長期的な収穫ですが、我々の本当の目的にはまだ遠く及んでいません。
問:その目的と言うのは何ですか?
Ma氏:世界最大規模だけでなく、同時に最強で最高のゲーム会社になることです。
問:『コード:ドラゴンブラッド』の日本での成功はどう捉えていますか?
Ma氏:これは大きな喜びでした。ですが、もっと大きな希望を持っています。日本市場は垂直領域が深い市場です。なので、特定の領域においてより深い成功を得たいと考えています。
MMOは大きなジャンルなので、MMOの中でも更に多くの細分化ができると思っています。
そして、本当に日本市場をターゲットにするのであれば、コンソールゲームやアニメ文化、現地のコアプレイヤー達をさけて通ることはできません。この方面で成功を収めて初めて、日本市場で進展があったと言えるのだと思っています。
(『コード:ドラゴンブラッド』)
問:『コード:ドラゴンブラッド』の海外展開により、海外市場もしくは日本市場での実力を証明できたのではないですか?海外や日本市場での成功の方程式を掴んだ、と見る人もいますがどう思いますか?
Ma氏:私達はジャンル戦略を提唱して来ました。それは、あるゲームジャンルにおいてTop1、Top2の成績を収めることでより大きな成功を得ることができる、という考え方です。
これはこれまでに何度も検証されてきていますし、中国だけでなく世界的に通用するものだと思っています。
問:テンセントゲームズの海外スタジオはどの様な布陣になっていますか?
Ma氏:各開発スタジオには海外スタジオの設立を推奨しています。欧州、北米には開発チームを、東南アジア、中東、欧州、北米にはパブリッシングチームをおいています。
そして、全体として見ればRiotやSupercellもありますからね。
問:テンセントゲームズの中国パブリッシングの責任者が今は海外パブリッシングの責任者をされているようですが?
Ma氏:はい。大企業が方向を転換するにあたって、手が空いている人を新しいポジションにつける、という方法は機会損失に繋がることが多いです。
従来の事業で良い成果を出しているチームがあるとすれば、新規事業にそのチームを用いるべきだと思います。なので、海外チームには最高のリソースを割いています。
問:テンセントゲームズの海外競争力はどの様に見ていますか?
Ma氏:正直に言うと、スマホゲームにおいてはトップクラスだと思っています。2019年の全世界スマホゲームMAUランキングTop10の内5タイトルは弊社のゲームでもあります。
ただ、ゲーム業界は変化の速度が速いですから、まだまだ多くのことをやらなければなりません。
問:例えば?
Ma氏:戦略性、開放度、より大規模なユーザー間のインタラクティブです。他には弊社ではプロダクションバリューと呼んでいますが、ゲーム開発の工業化レベルを上げることです。
ゲームのイノベーションに関して
その後、2015年に『H1Z1』と協業し世界的に150あまりの開発チームがMODから本当のゲームへ昇華させようとしていることを発見しました。『PUBG』に投資する頃には2Aゲーム開発能力を持つ50社近くが同ジャンルのゲーム開発を行っていました。
この様に、一つのゲームプレイ、ゲームジャンルのイノベーションには多くの対価が必要なのです。なので、次のイノベーションもこれと同じ規模の対価が必要でゲーム業界全体で取り組む必要があります。
(Bohemia Interactive『DayZ』)
問:世界的にイノベーションを起こせる開発スタジオを探していますね?
Ma氏:はい。TGIF(Tencent Gameplay Innovation Fund)というのを3年前に立ち上げて、小規模な開発チームにも投資を行っています。ゲーム開発の0から1や、1から10の過程はとても重要なので、その手助けをしたいと思っています。
問:投資のロジックやゲームジャンルの好みなどを教えて下さい。
Ma氏:原則はとてもクリアです。トップクラスのチームに投資することです。そして、ゲームジャンルに好みはありません。どのゲームジャンルは最初はとても小さなニッチジャンルでしたから。
問:この数年で取りこぼしたチャンスはありますか?
Ma氏:この数年はとても多いです。
問:競合に負けたと言うことですか?
Ma氏:そういうことでもないです。社内的にあと一歩やりきれなかった、という感じです。例えば『ランダム性』の認識においてもう少し手の施しようがあったと思っています。これは、さっきの戦略性、開放度、より大規模なユーザー間のインタラクティブと合わせて、今後より大事な意味を持つと思っています。
(Tencent Gameplay Innovation Fund)
問:テンセント社内の人からすると、会社の新ジャル開拓への理解も良く、方向性も正しい。ただ、実際にゲームを出すのは非常に難しい。と思っているのではないですか?
Ma氏:新ジャンル開拓の失敗率は90%はあるでしょう。なので、開発チームにはいくつかの要求を出しています。
1.正しい方向性、固い決意、反復して試すこと。
2.チーム全体の練度を高く保ち、自身の限界を知っていること。
3.現在の市場とのバランスを保っていること。
4.工業化を重視すること。
問:テンセントゲームズの新ジャンル開拓が順調でないとして、その原因はなんですか?2次元ジャンルは幾度となく失敗しています。
Ma氏:イノベーションとはそういうものですね。数多くの失敗は必然であり、成功は偶然です。
2次元も同じです。4、5年前にこの概念がでてきた時は、5人程度の小さなチームも数に加えると中国だけで700~800くらいの開発チームがありました。そして今現在成功している2次元ゲームは3、4本ですよね。確率で言うと1%にも達していません。
問:なので、十分に寛容であるべきだと?
Ma氏:そうです。
当記事まとめ
■まとめ
・ドラブラ日本ヒットは嬉しいが、まだ足りない
・日本市場攻略にはコンソール、アニメは避けられない
・イノベーションの失敗は必然、成功は偶然
・今後は戦略性、開放度、大規模なユーザーインタラクティブ、ランダム性、開発の工業化が大事
・投資は中小も対象。ただ特定ジャンルでトップクラスであること
関連情報
遊戯葡萄記事:こちら
テンセントゲームズ タイトル発表記事:こちら
Tencent Gameplay Innovation Fund:こちら
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